阿倍野区のアレルギー内科・呼吸器内科

あべのハルカスメディカルプラザ22F

中島アレルギー・呼吸器内科クリニック

呼吸器専門医・アレルギー専門医

アレルギー性咳嗽・アレルギー性肺疾患

診療時間
初診や予約外受診患者さんが多数で許容範囲を超えた場合は、12時前・18時前でも、受付を終了せざるおえない場合があることをご理解ください。

初診・久しぶりの受診の患者さんへ

木曜日以外の診察日で、午前診2枠、午後診2枠予約枠を設けました。
詳細は、お電話でお問い合わせください。

お支払いについて

当院は、現金のみでのご対応をさせていただいております。
クレジットカードはご利用いただけません。

院長 中島宏和

医学博士

・日本内科学会 認定医

・日本呼吸器学会呼吸器専門医

・日本アレルギー学会
 アレルギー専門医

map
禁煙外来
無呼吸症候群
スタッフ採用情報
問診票ダウンロード
スマートフォン専用サイト
無呼吸なおそう.com

アレルギー性咳嗽(がいそう)

 アレルギー性肺疾患の中でも日常良く遭遇する疾患について記載したいと思います。

 本稿では、遷延性(発症3週間~8週間まで)または慢性咳嗽(発症8週間以上持続する咳嗽)の中でもアレルギー性の機序で生じることもある咳喘息、アレルギーが主な原因であるアトピー性咳嗽、喉頭アレルギーについてご説明し、さらに、昨今その健康被害が問題になり、アレルギー性機序の関与も疑われている黄砂による咳嗽について説明します。

咳喘息1)

1.診断
咳喘息は、喘鳴や呼吸困難がなく、慢性的に咳嗽だけが続きます。咳喘息は正式な喘息ではないですが、喘息の亜型と考えられています。
2.臨床像
咳嗽は就寝時、深夜あるいは早期に悪化しく、上気道炎、冷気、運動、喫煙、雨天などが増悪因子となることが多いと言われています。喀痰はないか、伴っても少量です。喘鳴(呼吸するときに聞こえるゼーゼー・ヒーヒーという音)は全く認めず、大きく深呼吸しても認めません(わずかでも喘鳴が認められれば咳喘息とは言わず、「咳優位型喘息」と呼びます)。経過中に成人では30%前後に喘鳴が出現し、喘息に移行すると言われています。
3.病態
外部からの抗原(アレルゲン)に対するI型アレルギー反応が少なくとも一部の患者に関与すると考えられていますが、典型的気管支喘息と比べて明らかでない場合も多いです。
4.治療
吸入ステロイド薬の早期導入により、典型的喘息への移行が防止できる可能性があり、吸入ステロイド薬は咳喘息においてまず始めに行うべき治療です。必要に応じて気管支拡張薬(気管支を広げて呼吸を楽にする吸入薬)を一緒に吸入します。内服薬では、プランルカスト水和物(オノン®)、モンテルカストナトリウム(シングレア®やキプレス®)などのロイコトリエン拮抗薬、トシル酸スプラタスト(IPD®)の有効性も報告されています。吸入ステロイド薬を何らかの理由で使用できない症例では、これらの抗アレルギー薬による単剤治療を考慮しても良いと言われています。
 急に咳嗽がひどくなった時やステロイド吸入により咳嗽が誘発される場合は、経口ステロイド薬{プレドニソロン(プレドニン®)20~30mg/日を3~7日間を投与する場合もあります。
 吸入ステロイド薬を導入しても咳嗽が改善しない場合は、気道過敏性検査(肺機能検査を行う時に気管支を収縮させる薬を吸入していただき肺機能の値が悪化するかどうかを見る誘発検査)などの専門的検査を施行し咳喘息の診断が妥当かどうかを再検討するために、気管支喘息を専門に診ている大学病院などの専門施設で精査をお願いしなくてはならないこともあります。

アトピー性咳嗽1)

1.症状
喉頭や気管の掻痒感(イガイガ感)を伴う乾性咳嗽が主です。咳嗽症状の生じやすい時間帯は、就寝時、深夜から早朝、起床時、早朝の順に多いと報告されています。咳嗽の誘引として、冷気、暖気、会話、受動喫煙、運動、香水の臭いなどが多いのが特徴的です。
 喘息以外のアトピー疾患に罹患したことがあったり、血縁者にもアトピー疾患(皮膚炎だけではありません)に罹患したことがあったりします。
2.検査所見の特徴
気管支拡張薬による気道可逆性は認めず(つまり気管支拡張薬を吸入して咳は改善しないということです)、気道過敏性の亢進も認めない(つまり、気管支を収縮させるお薬を吸入しても症状が悪化することはないということです)。しかし、咳感受性は亢進しており、咳が出やすい状態になっています。検査のために濃いめの食塩水を吸入していただき採取した誘発喀痰中に好酸球という細胞を認めますが、程度は咳喘息や喘息よりも少ないと報告されています。肺末梢(つまり奥の方の肺)には好酸球は認められず、好酸球性炎症が末梢気道には及んでいないことが特徴的で、この点が咳喘息と大きく異なる部分です。
3.治療
気管支拡張薬が無効であることが咳喘息と大きく異なる点です。塩酸フェノキソデナジン(商品名アレグラ®)や塩酸エピナスチン(商品名アレジオン®)などのヒスタミンH1受容体拮抗薬が有効ですが、その有効率は約60%で、咳嗽を完全に軽快させるためにはステロイド薬を必要とする場合が少なくないです。咳嗽が強く吸入ステロイド薬の吸入が困難である場合には、喘息や咳喘息の治療と同様経口ステロイド薬(プレドニソロン20~30mg/日を1~2週間)を投与することもあります。
 アトピー性咳嗽は将来喘息を発症する事はないと言われていますが、咳嗽が軽快して治療を終了すると、約4年間で約50%の患者に咳嗽の再燃を認めるといわれているので注意が必要です。

喉頭アレルギー2)

1.概念と臨床症状
遷延性~慢性咳嗽の患者のうちアレルギー素因を有する患者において、アトピー性咳嗽とは別に喉頭に限局した原因に伴って生じる咳嗽患者が存在すことが報告され、喉頭アレルギーと名づけられました。
 喉頭アレルギーの2大症状は咽喉頭異常感と執拗な咳嗽です。
2.治療
咽喉頭異常感は、抗ヒスタミン薬に対して抵抗性のことが少なくなく、このような場合漢方薬の麻黄附子細辛湯が有効なことがあります。
 急性あるいはアナフィラキシー型の喉頭アレルギーでは喉頭浮腫による気道狭窄のため、速やかに血管確保・血管収縮薬投与・ステロイド全身投与や吸入を行い、これらが無効の場合は気管内挿管や気管切開が必要になるため、総合病院や大学病院などの耳鼻咽喉科へ送った方が無難でしょう。
 慢性型の喉頭アレルギーでは通常のアレルギー性鼻炎の治療が推奨されています。すなわち、抗ヒスタミン薬の内服です。難治性の場合は、喘息用のステロイド吸入が論理的には有効ですが、喉頭アレルギーに対するステロイド吸入療法のまとまった臨床治験の報告はまだ無いため模索状態です。

黄砂による咳嗽

 近年、黄砂飛散日に咳嗽や喘息症状が悪化すると訴える患者さんも珍しくないのではないでしょうか。市瀬3)によると、黄砂に含まれる有害成分として、ミネラル粒子中のSiO2(シリカ。アスベストの成分でもありますが、アスベストは針状になったものを言います)、微生物由来成分であるβ-glucan(カビの一成分)やリポポリサッカライドがあります。大気汚染物質と黄砂との反応生成物に、二酸化硫黄(SO2)と黄砂の混合物である硫酸イオンなどがあります。肺に炎症を起す成分はSiO2、β-glucan, リポポリサッカライド、硫酸イオンで、黄砂、SiO2等にはアレルギー増悪作用があるといわれています。黄砂のみをマウスの気管内に投与しても、アレルギー反応や喘息様の病態は起きませんが、黄砂にダニ抗原あるいは卵白抗原をミックスして投与すると、抗原を単独投与した場合よりも遥かにアレルギー炎症の悪化が見られたという報告があります。

 このように黄砂そのものがアレルギーを引き起こすわけではないですが、黄砂に付着しているカビ等の成分がアレルゲン(抗原)となり、これに黄砂の中のSiO2のような成分が、そのアレルゲンの作用を強く助長する可能性はあります。

 では、実際には黄砂はどのような呼吸器症状を生じるのでしょうか。成人気管支喘息では、黄砂飛散時に患者の10~20%で呼吸器症状が増悪し4)、小児では喘息増悪による入院のリスク上昇を生じました5)。一方で、黄砂飛散前後で成人6)や小児喘息患者7)の肺機能値に変化が無かったとする報告もあり、今後の研究結果が待たれるところです。

 黄砂による咳嗽に対しての特異的治療法は無く、気管支喘息や鼻炎の通常の治療に加えて、黄砂飛散時は不要不急の外出を控え、外出が必要な時はマスクを着用して防護するしかないと考えられています。

おわりに

 咳嗽は日常的に遭遇する事が多い症状であるが、原因は多種多様で、アレルギー性機序による咳嗽も多義にわたります。胸部レントゲン写真を撮影しても異常を認めないのにもかかわらず咳嗽が改善しない症例と遭遇したなら、上記のような事柄を考えていく必要があるでしょう。なお、本稿は参考文献8)9)を加筆・修正しましたものです。

 

【参考文献】
1)日本呼吸器学会 咳嗽に関するガイドライン第2版作成委員会:咳嗽に関するガイドライン.日本呼吸器学会.42-49,2012.一部、「日本呼吸器学会咳嗽に関するガイドライン作成委員会:咳嗽に関するガイドライン.日本呼吸器学会.38-59,2005.」も参照した。

2) 内藤健晴:喉頭アレルギー.アレルギー59:671-675,2010.

3)市瀬孝道;共働き夫婦の子供の喘息にすぐ効いた生活術.黄沙アレルギーについて

http://happyfu-fu.com/zensoku/iryou/kousa/doctor_ichinose_sensei.html.2006.

4) 迫隆紀,他:黄砂飛散時の成人喘息患者の症状増悪,頻度における国内都市間の差異についての検討.日呼吸会誌48(増刊号):152,2010.

5) 金谷久美子,他:小児における黄砂飛来と喘息発作の関係-ケースクロスオーバースタディによる評価-.アレルギー59(3,4):398,2010.

6) 岸川禮子,他:福岡市における黄砂現象の影響調査(第3報)-気管支喘息患者のPEF値の変動-. アレルギー589(8,9):1209,2009.

7) 綱本裕子,他: 福岡市における黄砂が気管支喘息患児に及ぼす影響に関する調査(第2報). アレルギー589(8,9):1311,2009.

8)中島宏和、東田有智:アレルギー疾患に伴う咳.診断と治療99:2079-2083,2011.

9)中島宏和、東田有智:アレルギー相談室Q&A。しつこい咳の患者さんを診た時、何を考えればよいでしょう. アレルギーの臨床31:92, 2011.

 

ロゴマーク
ページトップ
中島アレルギー・呼吸器内科クリニック

〒545-6022 大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカスメディカルプラザ 22F

TEL.06-6657-7701