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医学博士
・日本内科学会 認定医
・日本呼吸器学会呼吸器専門医
・日本アレルギー学会
アレルギー専門医
アレルギー性肺疾患の中でも日常良く遭遇する疾患について記載したいと思います。
本稿では、遷延性(発症3週間~8週間まで)または慢性咳嗽(発症8週間以上持続する咳嗽)の中でもアレルギー性の機序で生じることもある咳喘息、アレルギーが主な原因であるアトピー性咳嗽、喉頭アレルギーについてご説明し、さらに、昨今その健康被害が問題になり、アレルギー性機序の関与も疑われている黄砂による咳嗽について説明します。
近年、黄砂飛散日に咳嗽や喘息症状が悪化すると訴える患者さんも珍しくないのではないでしょうか。市瀬3)によると、黄砂に含まれる有害成分として、ミネラル粒子中のSiO2(シリカ。アスベストの成分でもありますが、アスベストは針状になったものを言います)、微生物由来成分であるβ-glucan(カビの一成分)やリポポリサッカライドがあります。大気汚染物質と黄砂との反応生成物に、二酸化硫黄(SO2)と黄砂の混合物である硫酸イオンなどがあります。肺に炎症を起す成分はSiO2、β-glucan, リポポリサッカライド、硫酸イオンで、黄砂、SiO2等にはアレルギー増悪作用があるといわれています。黄砂のみをマウスの気管内に投与しても、アレルギー反応や喘息様の病態は起きませんが、黄砂にダニ抗原あるいは卵白抗原をミックスして投与すると、抗原を単独投与した場合よりも遥かにアレルギー炎症の悪化が見られたという報告があります。
このように黄砂そのものがアレルギーを引き起こすわけではないですが、黄砂に付着しているカビ等の成分がアレルゲン(抗原)となり、これに黄砂の中のSiO2のような成分が、そのアレルゲンの作用を強く助長する可能性はあります。
では、実際には黄砂はどのような呼吸器症状を生じるのでしょうか。成人気管支喘息では、黄砂飛散時に患者の10~20%で呼吸器症状が増悪し4)、小児では喘息増悪による入院のリスク上昇を生じました5)。一方で、黄砂飛散前後で成人6)や小児喘息患者7)の肺機能値に変化が無かったとする報告もあり、今後の研究結果が待たれるところです。
黄砂による咳嗽に対しての特異的治療法は無く、気管支喘息や鼻炎の通常の治療に加えて、黄砂飛散時は不要不急の外出を控え、外出が必要な時はマスクを着用して防護するしかないと考えられています。
咳嗽は日常的に遭遇する事が多い症状であるが、原因は多種多様で、アレルギー性機序による咳嗽も多義にわたります。胸部レントゲン写真を撮影しても異常を認めないのにもかかわらず咳嗽が改善しない症例と遭遇したなら、上記のような事柄を考えていく必要があるでしょう。なお、本稿は参考文献8)9)を加筆・修正しましたものです。
【参考文献】
1)日本呼吸器学会 咳嗽に関するガイドライン第2版作成委員会:咳嗽に関するガイドライン.日本呼吸器学会.42-49,2012.一部、「日本呼吸器学会咳嗽に関するガイドライン作成委員会:咳嗽に関するガイドライン.日本呼吸器学会.38-59,2005.」も参照した。
2) 内藤健晴:喉頭アレルギー.アレルギー59:671-675,2010.
3)市瀬孝道;共働き夫婦の子供の喘息にすぐ効いた生活術.黄沙アレルギーについて
http://happyfu-fu.com/zensoku/iryou/kousa/doctor_ichinose_sensei.html.2006.
4) 迫隆紀,他:黄砂飛散時の成人喘息患者の症状増悪,頻度における国内都市間の差異についての検討.日呼吸会誌48(増刊号):152,2010.
5) 金谷久美子,他:小児における黄砂飛来と喘息発作の関係-ケースクロスオーバースタディによる評価-.アレルギー59(3,4):398,2010.
6) 岸川禮子,他:福岡市における黄砂現象の影響調査(第3報)-気管支喘息患者のPEF値の変動-. アレルギー589(8,9):1209,2009.
7) 綱本裕子,他: 福岡市における黄砂が気管支喘息患児に及ぼす影響に関する調査(第2報). アレルギー589(8,9):1311,2009.
8)中島宏和、東田有智:アレルギー疾患に伴う咳.診断と治療99:2079-2083,2011.
9)中島宏和、東田有智:アレルギー相談室Q&A。しつこい咳の患者さんを診た時、何を考えればよいでしょう. アレルギーの臨床31:92, 2011.
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